2020年8月7日

長崎原爆投下75周年によせて

 今年は始まって早々、世界中でCOVID-19のパンデミックによる被害が大きなものとなっており、6月半ば時点で確認されただけでも1,400万人がこのウイルスに感染して、このうち60万人が死亡し、この数は今なお増加しているという惨状となっています。

  今日科学は大きな進歩を遂げていますが、人々の健康向上に割り当てられるリソースは不十分です。オックスフォード大学経済学部が国連向けに作成した調査結果によると、COVID-19の影響に対する対応が今なお不十分なままだと、6億4千万人が感染し、世界の低所得国で1,700万人が死亡するとされています。また、病院の集中医療ベッドで220万人の患者を治療する直接医療費は、推定162億8千万米ドルにのぼる可能性があるとされる一方、COVID-19の注目点は乏しい医療リソースにも向けられ、これによりHIVや結核、マラリアにより本来避けられる死者数がさらに170万人になる可能性があります。

  同時に、国際的コミュニティはCOVID-19の薬物治療やワクチンが市場主導の要因のみではなく、公平性に基づいて人々の手に届くよう確保しなければなりません。

  換言すれば、この種のパンデミックに取り組むためのリソースが乏しい発展途上国は大打撃を受けるということです。戦争で疲弊したイエメンでは、ウイルスに感染したと確認されたすべての人の1/4がこれで亡くなっており、世界平均の5倍です。国連の緊急援助調整機関であるOCHA(国連人道問題調整事務所)が作成したCOVID-19に関する2020年7月10日付けの背景報告書によると、世界の最貧層10%をパンデミックの1次的および2次的影響から保護するには、900億米ドルが必要になるだろうとのことです。リスクがあり最も打撃を受ける63か国について提案された2020暦年のプロジェクト概要を示すOCHAの世界人道支援計画、GHRP(Global Humanitarian Response Plan)では、COVID-19による最悪の影響に対処するため助成金103億米ドルを、幅広い医療プロジェクトに使うよう主張しています。まず間違いなく、世界の支援水準は劇的に下がることでしょう。援助を行う可能性のある各国政府とも、自国内の問題に直面するからです。先進国においてさえ、大部分の人々、特に社会の隅に追いやられた人々は、COVID-19の時代において医療を受けることが難しいか、あるいは事実上不可能ということになります。最も興味深いことですが、世界最先端の先進国であり、軍事力の点でもナンバーワンの超大国であるアメリカ合衆国がCOVID-19の感染者数と死者数が最も多いのです。他の複数の先進国もその国民の被害とこのパンデミックによる経済的苦難はそれほどひけを取らない状況です。

  COVID-19は各国の軍拡競争が続いているなかで起きています。例えば、米国政府はW93として知られる新型の潜水艦発射式核弾頭設計開発に多額の予算を投じることを目指して核軍拡競争に新たな一歩を踏み出しており、これは2040年までには配備したいとしています。COVID-19は、世界的な軍事力や経済的優位が必ずしも国の安定や幸福を保証するとは限らないことを証明しています。各国政府は、高価な軍事物資で自国を武装することに過剰に注力するのではなく、国民の命を守り、その生活水準を向上させることに、科学や利用できるリソースを活かすことへより注意を向けるべきです。実際、2017年に採択されたTPNW、核兵器禁止条約は批准した国・地域がわずかに40で、そのいずれも核兵器を保有した国ではありません。これは、75年前に世界は広島と長崎に落とされた原子力爆弾により計り知れない人的被害がもたらされ、何十万という無辜の市民が即死またはその後の核放射線の結果亡くなったのを目撃したにもかかわらずです。

  原爆記念日が訪れるたびに、我々は皆科学の濫用が人の命を危険に曝すことを思い出すべきなのです。

  長崎への原爆投下はSata Foundationにとって特別です。Sata Foundationのロゴは、1945年8月9日に長崎の約500メートル上空で原子爆弾が爆発したときに完全に破壊された浦上天主堂の聖母マリア像の頭の写真を描写したものだからです。私は、人道主義にとって―核兵器がなく、科学やテクノロジーを正しく利用し、また人類の向上のために乏しいリソースを割り当てることで平和に暮らす世界にとって―力強いシンボルとしてのこの長崎マリア像が、ローマ教皇フランシスコ訪問のなかでやっと正当に認識されたことを非常に嬉しく思っています。2019年11月24日、教皇フランシスコは38年ぶりに来日した際、長崎爆心地公園で演説して核兵器の「言語に絶する恐怖」を非難し、これは各国に誤った安心感を示しているのだと述べて、世界のリーダーらに対して核兵器の備蓄を終わらせようと促しました。「何百万という子ども達や家族が非人道的な状況で暮らす世界において、これまで以上に破壊的な兵器の製造、改良、整備、販売によって浪費されるお金や生まれる富は、天に向かって叫ぶ侮辱である」と教皇はおっしゃいました。

  教皇が長崎の野球スタジアムで約35,000人を前にしてミサを行ったとき、原爆から蘇った聖母マリア木像の頭の前で立ち止まって思案されましたが、これこそSata Foundationの世界平和のシンボルです。これはニュースで広く報道されています:
https://www.vaticannews.va/en/vatican-city/news/2019-11/hiroshima-nuclear-editorial-pope-japan.html
https://www.instagram.com/p/B5PyCZhKw-L/

  Sata Foundationは、現行の情況に照らして実行可能である限り、我々の人道と平和の使命を追及し続けますのでご安心下さい。

  Sata Foundationへの寛大なご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。



SATA Foundation
理事長 佐多 保彦


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