SATA Foundation 2012年度 年次報告

I.寄付

2012年度、SATA Foundationは以下の寄付を実施しました。

(1)シェチェン診療所(ネパール カトマンズ・ボダナート)(http://www.karuna-shechen.org

 SATA Foundationは長年にわたり、ネパールの首都カトマンズ近郊の人口密集地帯に2000年に設立されたシェチェン診療所への資金援助を行っています。診療所は患者の宗教、民族、政治的背景にかかわらず、難民や山岳民族を含む一大コミュニティに対し質の高い医療を提供しています。医療サービスはコストスライド制で、貧困状態が特に厳しい患者には、すべての医療行為および医薬品が無償で提供されます。診療所には月に3,500人を超す患者が受診し、内科、薬局、分析ラボ、結核(D.O.T.)クリニック、整形外科、産科、HIV感染者・AIDS患者とその家族のためのカウンセリング、ホメオパシー、チベット伝統医療、チベット伝統薬調合所、鍼療法、歯科、歯科ラボの各科・設備があります。

 2012年、SATA Foundationの寄付により、クリニックが行った主な事業は次の通りです。(a)3000名以上の生徒たちが幼稚園から大学入学前レベルまでの教育を受けられる、バンブー・スクール2校とバンブー・カレッジ1校をネパール・イラムとジャーパに建設、(b)ネパールの辺境山岳地帯アッパー・フムラの12か村の子供たち150名を収容する寮と校舎の拡張工事の完了、(c)インドの6か村に医療サービスとコミュニティ振興プログラムの提供を開始し、合計18か村で、移動クリニックの運営、健康に関する教育、太陽光発電による明かりの普及、安全な飲料水の確保、HIV/AIDSに関する知識の普及と予防、寺子屋式教育の実施、(d)ブータンのシェチェン修道院より4名の尼僧をソーラー・エンジニアとしての訓練のためにベアフット・カレッジ(インド)に派遣。4名は現在ネパールで100基の家庭用太陽光照明システムを設置しています。うち40基はナモ・ブッダの仏教関連の療養所、残り60基はベネパ・バレー近隣の2か村です。


(2)Banyan Home Foundation (http://www.banromsai.jp

 HIVに感染/AIDSを発症した子どもたちのためのBan Rom Sai Children's Homeを運営するBanyan Home Foundation(BHF)は日本人の名取美和さんによって設立されました。
 SATA FoundationはBHFに対し、2007年から寄付を行っています。

 2012年度のSATA Foundationの寄付により、Ban Rom SaiのHIV/AIDSに感染した子供たちは、Ban Rom Saiで企画された下記のイベントに参加し、地元の人たちとの交流を楽しみました。(a)地域スポーツ交流(2012年3月1日-2013年2月28日)。バドミントン大会78名、テニス大会76名、ペタンク大会85名の合計239名がこのプロジェクトに参加しました。(b)若者よ、本を読もうプロジェクト(2012年1月1日-12月31日)。毎月34名から50名の子供たちが本を読み、その内容をまとめて出来栄えを競い合いました。年間で503名が参加しました。(c)事故と応急手当てに関する実践的なトレーニング(2013年2月25日)。参加者64名。(d)趣味の音楽(2012年3月1日-2013年12月31日)参加者はわずか10名ですが、全員、音楽家に成長しそうな才能を秘めています。
 過去数年にわたるSATA Foundationの寄付により、Ban Rom Saiの子供たちは暮らしている地域社会に順調に受け入れられ、同化しつつあります。


(3)日本白血病研究基金 (http://www.flrf.gr.jp(日本語のみ))

 2012年、SATA Foundationはチューリッヒに拠点を置く映像作家ファリダ・パチャ(監督・製作)とルッツ・コネマン(撮影・共同製作者)による長編インディペンデント・ドキュメンタリー映画『私の名は塩(My Name is Salt)』の製作に出資を行いました。映画はインドのカッチ砂漠に暮らす、何千人もの塩田労働者たちのうちの一家族の苦難を描いています。過酷な生活や労働条件に光を当てつつも、人間というもののあり方について、より哲学的な理解を深めようとする作品です。このテーマは「あらゆる文化、宗教、信条をもつ人々の間における平和の価値と普遍的人権の尊重」を強調するSATA Foundationの設立理念と一致しています。


(4)認定特定公益信託 NPO日本白血病研究基金http://www.flrf.gr.jp(日本語のみ))

 2012年9月、SATA Foundationは認定特定公益信託 日本白血病研究基金に対し寄付を行いました。
(所在地:日本白血病研究基金 〒105-0001東京都港区虎ノ門2-7-14、電話03-3593-3341、Eメール:leukaemia@flrf.gr.jp)


(5)アジアにおける国際法整備(DILA)財団

 SATA Foundationは引き続きアジアにおける国際法整備を推進するため、アジアの若い国際法研究者による特にすぐれた国際法に関する論文に対し、2005年から毎年、佐多賞(2000米ドル)を授与しています。受賞論文はアジアにおける国際法整備(DILA)財団の後援により、Asian Yearbook of International Law (「アジア国際法年鑑」:Martinus Nijihoff Publishersライデン/ボストン刊)に掲載されます。Asian Yearbookは世界平和と国際的法秩序を支える国際法に関するアジアの視点を世界に発信するものです。佐多賞はこのように、SATA Foundationの設立理念に謳われている「あらゆる文化、宗教、信条をもつ人々の間における平和の価値と普遍的人権の尊重に対する理解」を促進する一助となっています。


II. 東日本大震災被災者に対するSATA Foundationの活動

 2011年3月11日、日本の東北地方を襲ったマグニチュード8.9の地震と、それに続いた津波によって14000人以上の尊い命が犠牲となりました。今も、何百万人もの生活が、福島第一原子力発電所から漏れる放射能に脅かされています。これは近代に入って、日本が直面した最悪の自然災害です。SATA Foundationは東北地方の被災地に支援を行い、被災者が新たな困難に立ち向かうための援助を行ってきました。
 SATA Foundation理事長である佐多保彦は、Foundationのボランティアとともに自ら定期的に被災地を訪れ、被災者が緊急に必要としている援助を行うとともに、自立、自尊の前向きな精神をもってそれぞれの地域で再び働けるように、就職支援や相談に応じています。なお佐多理事長は地震と津波の被災者を援助するため、一般財団法人連帯東北・西南(http://www.rentaitohoku.org)を設立しました。 SATA Foundationはこのプロジェクトの資金として、平和祈念自転車競走(下記IIIを参照)の募金及びその他の寄付金を充当しています。


III. 長崎のマリア像と世界平和

 2005年8月の長崎原爆60周年に長崎のマリア像が浦上天主堂に返還され、SATA Foundationの長崎のマリア像に関わる目的はほぼ達成されました。Foundation は引き続き、長崎のマリア像を象徴とする世界平和キャンペーンを実施していきます。
2005年8月6日、SATA Foundationは広島(1945年8月6日)・長崎(同8月9日)の原爆投下60周年を記念し、Foundationの人道的使命を推進することを目的として、フランスにおいて「平和祈念自転車競走」及び関連事業を主催しました。第1回の大きな成功を受けて、平和祈念自転車競走はその後、毎年開催されています。
SATA Foundationは2012年7月28日、フランス・ブルゴーニュ地方シャイイにおいて第8回平和祈念自転車競走を開催し、452名のサイクリストが参加しました。この行事で集められた募金は、2011年3月11日に日本で起きた地震の被災者への寄付に充当されます(上記II参照)。
このフランスのシャイイにおける毎年のイベントをきっかけとして、日本をはじめ、世界各国で平和のための自転車競走が行われるようになりました。日本においては2009年から明治神宮外苑学生自転車クリテリウム大会が開催されています。SATA Foundationはこれが伝統として受け継がれ、ますます盛んになることを願い、同学生自転車クリテリウム大会に対して、毎年寄付を行っています。

Kriangsak Kittichaisaree教授
専務理事
SATA Foundation
2013年5月4日

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