Sata Foundation 2016年度 年次報告

I.寄付

2016年度、Sata Foundationは以下の寄付を実施しました。

(1) アゼルバイジャン重度先天性心臓欠陥スクリーニングプログラム

 Sata Foundationはロストロポーヴィチ・ヴィシネフスカヤ財団(RVF; website: http://rostropovich.org/)によってアゼルバイジャン共和国の首都バクーに設立された、新生児心臓スクリーニングプログラムに寄付を行いました。

 本プログラムは、新生児における重度先天性心臓欠陥(CCHDs)の早期発見により、できるだけ早い段階で治療を開始し、子どもたちが成長して通常の生活を送れるようにすることを目的としています。新生児のCCHDスクリーニングは非常に費用効率が高く、米国をはじめ、アゼルバイジャンの隣国グルジアなど各国において、苦痛を和らげ、多くの命を救ってきました。

 アゼルバイジャンにおけるプログラムは開始したばかりです。グルジア共和国の首都トビリシでRVFによって開始された新生児のための心臓スクリーニングプログラムが成功をおさめたことから、これをモデルとしてアゼルバイジャンの首都にもプログラムが設置されました。バクーの人口はトビリシの2倍であるにもかかわらず、心臓血管専門病院はCCHDsの新生児の治療に関してトビリシの施設ほど整っていません。このため、CCHDsのアゼルバイジャン人の新生児は、診断が間に合った場合は多くがトビリシに搬送され、矯正手術を受けています。その一方で、アゼルバイジャンには米国で教育を受けた優れた小児心臓外科医が存在します。このプログラムは、バクーで小児心臓医学の近代化を図る努力の一環でもあります。新生児におけるCCHDsの早期発見は、心臓欠陥のある新生児を外国に搬送するのではなく、診断と治療を国内で行う構想において重要な要素を占め、Sata Foundationのサポートはこの目標を達成する一助となっています。

(2) アジアにおける国際法整備(DILA)財団

 Sata Foundationは引き続きアジアにおける国際法整備を推進するため、アジアの若い国際法研究者による特にすぐれた国際法に関する論文に対し、2005年から毎年、DILA賞(2000米ドル相当)を授与しています。受賞論文はアジアにおける国際法整備(DILA)財団の後援により、Asian Yearbook of International Law (「アジア国際法年鑑」)に掲載されます。同Asian Yearbookは世界平和と国際的法秩序の要としての国際法に関するアジアの視点を世界に発信するものです。DILA賞は、Sata Foundationの設立理念に謳われている「あらゆる文化、宗教、信条をもつ人々の間における平和の価値と普遍的人権の尊重に対する理解」を促進する一助となっています。 
 アジア国際法年鑑2012年号のDILA賞は2015年に授与されました。受賞論文はシンガポール国立大学のジャクリン・ネオ教授による「人権を法に包含することについて:マレーシア法廷における二元論の緩和と解釈」です。本論文はDILAのホームページで読むことができます。 http://www.dilafoundation.org/uploads/1/1/2/8/11284804/2012asybil_vol18_1-37__neo_.pdf

 2013年度DILA賞は現在ミシガン大学客員教授である、フィリピン出身のトム・テンプローサ教授による「法の合流に関する考察:1940年から2000年までのフィリピン裁判所における国際法」に贈られ、2014年のDILA賞受賞者は、論文「中国における2年間の死刑執行猶予付死刑判決:人道的救済措置か、あるいは残酷・非人道的な恥ずべき処置か?」の著者であるシンガポール大学のマシュー・シート氏に決定しました。2名の受賞者に対する合計4000ドルの賞金はSata Foundationにより、2017年3月に授与されました。


(3) バンヤンホームファウンデーション

 HIV/AIDSに感染した子どもたちのためのBan Rom Sai Children’s Homeを運営するBanyan Home Foundation(BHF)は日本の名取美和さんによって設立されました。

 2007年より、Sata Foundationは継続してこの慈善団体に寄付を継続しており、2016年度も例年通り寄付を行いました。2016年度の寄付金の使途は以下のプロジェクトです:

(a)子どもたちに読書の楽しみを教えるプロジェクト
(b)コミュニティスポーツ
(c)青少年サッカートーナメント
(d)バーンロムサイの子どもたちと地元の青少年のためのサマーキャンプ
(e)事故と応急処置の実用トレーニング

 約50-100名がこれらの活動に参加しました。これまでのSATA Foundationの寄付により、バーンロムサイの子供たちは暮らしている地域社会に順調に受け入れられ、理解を得つつあります。例を挙げると、無償で高校及び職業訓練校で学べる特別枠に数名が認められました。バーンロムサイで暮らしていた子どもたちのうち2名が、現在フルタイムで働いています。チェンマイ県や近隣のチェンライ県の大学で学んでいる子どもたちもいます。
 バーンロムサイで最も年長なのは25歳の青年ですが、初めてこの施設に来たときは7歳でした。一番年少の男の子は3歳です。


(4) シェチェン診療所(ネパール カトマンズ・ボダナート)(http://www.karuna-shechen.org

 Sata Foundationはネパールのシェチェン診療所に寄付を行いました(http://www.karuna-shechen.org)。この寄付は2000年のシェチェン診療所設立以来、継続して実施しています。

 シェチェン診療所はネパールの首都カトマンズ郊外の人口密集地に所在しています。診療所は患者の宗教、民族、政治的背景にかかわらず、難民やインド、ネパール、チベットの山岳地域の住民を含む一大居住圏に対し、質の高い医療を提供しています。医療サービスは変動支払制で、特に経済的に困窮している患者には、すべての医療行為および医薬品が無償で提供されます。診療所には、850の集落を対象とする移動診療所が併設されています。受診する患者は、年間140,000人を超え、診療所には、内科、薬局、分析ラボ、結核(D.O.T.)クリニック、整形外科、産科、HIV感染者・AIDS患者とその家族のためのカウンセリング、ホメオパシー、チベット伝統医療、チベット伝統薬調合所、鍼療法、歯科、歯科ラボの各科・設備があります。

 Sata FoundationとTKBグループは、ネパール・シェチェン診療所より、開設以来の継続した支援に対し、感謝の言葉を頂いています。



II. 長崎のマリア像と世界平和

 2005年8月6日、Sata Foundationは広島(1945年8月6日)・長崎(同8月9日)の原爆投下60周年を記念し、長崎のマリア像に象徴されるSata Foundationの人道的使命を推進することを目的として、フランスにおいて「平和祈念自転車競走」及び関連事業を主催しました。第1回の大きな成功を受けて、平和祈念自転車競走はその後、毎年開催されています。

 2016年度は、7月30日(土)にフランスのシャイイ-スル-アルマンソン(www.courirpourlapaix.com)にて、およそ500名のサイクリストを迎えて平和祈念自転車競走を開催しました。サーキットはヒロシマ(158km)、ナガサキ(113km)、トーホク(72km)と名付けられました。

 このイベントは、SATA Foundationのミッションを遂行することを目的とした、募金活動の一環として行われています。



2017年8月9日

SATA Foundation
専務理事
Kriangsak Kittichaisaree 教授


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