2024年8月8日
広島・長崎原爆投下79周年によせて
79年前の1945年8月6日に広島、さらに3日後の8月9日には長崎に原子爆弾が投下されました。これらの原子爆弾による人命の破壊や財物の荒廃は極めて大規模で広大な範囲におよび、その放射能の自然環境への残存は極めて甚大で長期にわたりました。これらの原爆投下による悲惨な人道危機と死者数、そして被害者の痛みと苦しみは全世界にショックを与え、それ以降のさらなる核兵器の使用回避につながりました。
しかし、核兵器使用の脅威は常に存在しています。国際司法裁判所(ICJ)が1996年に出した勧告的意見は、「国家の存亡そのものが危険にさらされるような極限の自衛状況における核兵器による威嚇または核兵器の使用が合法か違法かについては最終的な結論を下すことができない」とし、人類の危機を存続させています。したがって、核兵器を所有する国の首脳陣が、自国の存亡そのものが危険にさらされていると考えた場合、その考えが正当なものであれ不当なものであれ、核兵器を使用しないというまともな判断ができる保証はどこにもありません。
2021年1月22日に発効した2017年核兵器禁止条約は、70の国と地域が批准していますが、その中に核兵器所有国は含まれていません。ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons:ICAN)によると、ロシア、米国、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、および北朝鮮は、12,512発の核兵器を所有しており、その大半は広島に投下された原子爆弾より何倍も強力で、ニューヨーク市の上空でたった1発の核兵器を爆発させたとしても583,160人にのぼる死者が出ると推定されています(https://www.icanw.org/nuclear_arsenals)。
現在、世界中の多くの場所で全面戦争が起こっています。紛争地域では多数の死者が出ており、飢餓が猛威を振るっています。2024年6月26日に出された国連事務総長の子どもと武力紛争に関する年次報告書では、2023年にあった26の紛争状況に関する情報が提供されており、これらの紛争の甚大な短期的・長期的結果により、世界中で無数の子どもたちが未だかつてない苦しみに耐えていることが示されています。殺害された子どもの数は5,301人にのぼり、これは毎日およそ15人のこどもたちが命を奪われていることになります。レイプなどの性暴力は25%増加し、1,470人の子どもたちが被害にあっており、特に女子の被害が多くなっています。また、学校や病院を標的とした攻撃により、子どもたちが教育や医療を受けられない状態が続いており、昨年はそうした攻撃が1,650回あったことが確認されています。人道アクセスの拒否は前年比で32%増加し、5,205件の違反が確認されています。
紛争に何ら関わりのない子どもたちが戦争で巻き添えになり苦しんでいる現状は、あらゆる宗教の祈りの場が正当な軍事上の標的とならないにも関わらず原爆の爆心地から約500メートルの場所にあったため完全に破壊された長崎の浦上天主堂のことを思い出させるはずです。浦上天主堂にあったマリア像の焼け焦げた頭部は、Sata Foundationのロゴとして核兵器に対する私たちのキャンペーンや人道主義を推進する取り組みに用いられ、科学技術を適切に利用し、希少な資源を国籍、人種、宗教、民族を問わず人類の向上のために割り当てることで、平和に暮らせる世界にしていくという私たちの大いなる目標を表すものとなっています。
2024年7月27日(土)、SATA Foundationは、COVID-19の影響を受けた2020年を除いて2005年から毎年開催している「平和記念自転車レース」の第19回大会をフランス・ブルゴーニュ地方のシャイイ・シュル・アルマンソンで開催し、数百名の選手が参加しました。このレースは、ベルナール・イノーとフランチェスコ・モゼールが共同スポンサーとなり、コート・ドールのオーソワの道を走る3つのコースで構成されました。このレースは、広島・長崎の原爆犠牲者に哀悼の意を表し、人類に核兵器の危険性を警告するとともに、世界各地の戦争の罪なき犠牲者への支援を表明するためのものです。また、SATA Foundationの使命を遂行するための資金を調達し、2011年に特に東北地方を襲った津波の被災者に対し、1件の登録につき2ユーロの寄付を行うことも目的としています。詳しくはウェブサイト(https://www.courirpourlapaix.com/)をご参照下さい。
また、SATA Foundationの設立理念の中に記されている「文化、宗教、信条の垣根を越え、あらゆる民族が互いに理解しあい、平和を尊び、基本的人権を尊重する」ことを目的として、2023年3月に設立されたSATA FoundationオックスフォードICJ奨学金は、毎年、国際司法裁判所(ICJ)から選ばれた英国オックスフォード大学出身の候補者に対して、ほぼ1年間の同裁判所での勤務を目的として、オランダのハーグでの生活費を支援します。詳しくはこちらをご参照下さい。
(https://www.law.ox.ac.uk/2023-2024-icj-judicial-fellows-programme
および
https://www.law.ox.ac.uk/sata-foundation-oxford-icj-fellowship-award)。
SATA Foundationへのご支援に、心から感謝いたします。
SATA Foundation
理事長 佐多 保彦
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